General AAS:ミネソタ大強盗団 [DVD]−ユルコロ情報

フィリップカウフマン監督伝説の西部劇大佳作!

　当時、公開時は全く話題にならずこれほど豊かで奥が深いストーリーの映画が地味な扱いを受けていたのが信じられないくらいである。監督は、「クイルズ」・「ライトスタッフ」・「存在の耐えられない軽さ」等の、タブー的な傑作を作り続ける奇才P・カウフマン監督作品で、彼の経歴を調べるとシカゴ大学で歴史学を専攻したという人だけに、脚本も担当し、監督デビュー作でもある本作で秀逸な素晴らしい力量を発揮している。内容は西部史上の歴史に名を残した、ジェシージェームズ&コールヤンガー・コンビの銀行襲撃事件を異色のリアリズムタッチで描いている。映画の舞台は開拓時代末期の1876年。ジェシージェームズを演じるのが、ロバートデュヴァルでクリフロバートソンがコールヤンガーを演じている。その2人率いる強盗一味は中部一帯の銀行等を荒らし回っていた。そして、ミズリー州の議会は強盗一味を特赦にしようと考えるが、度重なる被害に合い激怒する鉄道会社は強盗一味を全滅させるために、ある有力議員の協力で議案を棄却し、強盗一味に討伐隊を差し向ける。特赦が不可能だと知ったコールヤンガーは広告で見かけた、ミネソタ州のノースフィールドのファーストナショナル銀行を襲撃する計画を立て、ジェシージェームズ一味と二手に別れてミネソタ州に向けて出発するが、そこには様々な障害と試練が待ち構えていた…。という西部劇だが、P・カウフマン監督は時代に取り残されたこの強盗一味の生活を丹念にドキュメント構成で描き、色彩的な撮影技法も出色であり、風俗描写も非常に興味深い。強盗一味に襲撃され痛い目に合っていた鉄道会社が強盗一味の報復に燃える執念の展開もリアルな怖さがあって凄みが伝わってくる。後半、ノースフィールドに先に着いたコールヤンガーが、牛の買い入れ業者に化けて、銀行の頭取を口車にのせ町の連中に貯金をさせたり、その間に野球という?新しいゲームに興じたり、又は蒸気オルガンの修理をする場面もユニークで面白く楽しめる。が、ここから強盗一味と討伐隊との町中を巻き込んだ地獄の生々しい銃撃戦へと発展していくが、誰が敵ともたしかめずに撃ちまくり、無関係な人まで巻き込まれて殺される悲痛な見せ場と殺した強盗一味を棺桶に入れて立てかけて、なんと記念写真?を撮るという人間の非情な集団狂気の異様な皮肉が込められており、大変ショックを受けた。銃撃アクションは今風のような漫画的ではなく、大変痛々しく殺伐とした迫力が盛りあがる。強盗一味の末路の光景も、惨めであり残酷なシーンになっている。歴史劇としての趣向もないとはいえないだろう。私が一番注目したい所は、この作品には善人が全く出てこない点で無論、悪人らしき人物も見当たらないこの形式こそが、人間の心の欲望を照らし会わす恐怖と世論が本作品のテーマであり、P・カウフマン監督が伝えたかった真の意味だと思います。正直、名作や傑作とはいえないかも知れませんが、ニューシネマ西部劇の中で最も異彩を放つ幻の大佳作です!。

メーカー：紀伊國屋書店

コール・ヤンガー＆ジェシー・ジェームズものの決定版！

　邦題「ミネソタ大強盗団」。１９７２年ユニバーサル配給。米日とも興行的にも批評的にもほとんど無視され切った、正に幻の西部劇の逸品。監督・脚本は後に「ＳＦボディ・スナッチャー」「ライトスタッフ」「存在の耐えられない軽さ」等を撮る鬼才フィリップ・カウフマンで、個人的には本作はアメリカン・ニューシネマ・ムーブメントが生み出した西部劇の最高峰の一本。「地獄への道」（３９年ヘンリー・キング監督）「ロング・ライダーズ」（８０年ウォルター・ヒル監督）等で西部劇ファンにはお馴染みの南軍崩れギャング団の伝記的映画だが、最大の特徴は有名なジェシーではなくコール・ヤンガーの方を主役にしている点。ファナティックなジェシー（ロバート・デュバルがロバート・デニーロかと見紛う演技を披露）に対して、ヒューモラスで多少ニューロティックな味付けのコール・ヤンガーを、「まごころを君に（アルジャーノンに花束を」）からそのまま抜け出して来たようなクリフ・ロバートソンが好演している。音楽デイブ・グルーシン（「コンドル」「恋におちて」等）、撮影ブルース・サーティーズ（「ダーティ・ハリー」等）がニューシネマ時代の息吹をしっかり伝えてくれる。米国ではごく最近ユニバーサルからワイド版で初ＤＶＤ化された。日本版も是非！！！！

傑作。７０年代アメリカ映画ファンは観るべし！

　ジェシー・ジェームズやコール・ヤンガーに焦点を当てた西部劇は、ハリウッドでは多数製作されています。最近では、ブラピ主演の「ジェシー・ジェームズの暗殺」や、ウォルター・ヒルの男性派アクションの快作「ロング・ライダーズ」を思い浮かべる方も居るでしょうが、だが、ちょっと待って頂きたいと７０年代アメリカ映画ファンとして力説しておきたいのが今作。地味だし、一般的にはあまり知られていない映画だけど、凄くスタイリッシュだし、アメリカン・ニューシネマの色合いが強い作品。何故か突然の初ＤＶＤ化ですが、こんなサプライズなら大歓迎です。
義賊としても有名であった稀代のギャングであるジェームズ＝ヤンガー団の、特赦と自由と誇りを賭けたファースト・ナショナル銀行襲撃と、ピンカートン探偵社との攻防と顛末。
暴力的で、そそられるガン・ファイトシーンもありますが、どちらかと言えば、ロード・ムーヴィ的な趣。そして、全編に流れるユーモラスでリリカル、ファンタジックなムード。同時期製作されたアルトマンの「ギャンブラー」とヒューストンの「ロイ・ビーン」、両御大の異色ウエスタンの良い部分を合わせて、娯楽性を盛り込んだ様なテイストと言ったら、褒め過ぎでしょうか。
他のレビュアー氏の詳細な解説の通り、蒸気自動車に慄いたり、ベース・ボールを観戦したり、風呂に入って興じたりする彼らを見つめる眼差し。ペキンパー映画の如き、機械文明が押し寄せる折、終わりゆく時代への郷愁と取り残されようとする者たちへの共感も感じさせます。
クリフ・ロバートソンとロバート・デュヴァル、まるで“伝説のふたり”らしくない配役ですが、拘りのある西部劇ファンはともかく、ニューシネマ・エイジにはこれもありのキャスティングです（ふたりは、オスカー俳優ですし）。
フィルターを掛けたくすんだ色調のブルース・サーティスのカメラが実に美しい。後に「ライトスタッフ」を撮るフィリップ・カウスマンの名を世に出した傑作。

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