犯罪・ギャング:夕陽のギャングたち (アルティメット・エディション) [DVD]−ユルコロ情報

回想シーン、独白も復元した157分英語完全版

　2002年発売の英語版DVDも力作でしたが、今回は2007年MGMアルティメット版マスターを使用。
ラストの回想シーンとフアンの独白が復元されており、エンドテロップに飛び出す題名も
「A FISTFUL OF DYNAMITE」ではなく「DUCK YOU SUCKER」に戻っています。

特典映像の「分析：夕陽のギャングたち」「完全版リリース」も見逃せません。
各国のバージョン違い、カットされたシーンの比較など、バージョン違いの多い本作を知る上で
非常に興味深い資料です。
またラストの回想シーンは、既発のイタリア完全版DVDと音楽（使用バージョン）が異なります。
以前のスティングレイ社版DVDをお持ちの方も見比べて楽しめると思います。

メーカー：20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

ベストキャストたち、男のぶつかり合い

　主演キャストの二人、ロッド・スタイガーとジェームズ・コバーン。
山賊の荒々しさ、野蛮さ、そしてどこか人のよさそうなファン役のスタイガー。
飄々としてどこ吹く風の裏側に過去の苦しみを背負っている二面性を持つマロリー役のコバーン。
この二人の演技、役柄、総合的に見て、この映画は彼らの代表作のひとつだと思います。

ユーモアを混ぜつつ、革命と復讐、過去と現在、冒頭の強奪シーンから唸らされるストーリー展開になっています。金持ちに卑下され続ける乞食が一変、山賊の正体を現す場面。立場が一変し、弱者が強者に、強者が弱者に逆転します。これが映画全編を通した革命の根底にあるような気がして、脚本・監督であるレオーネの巧みさ、皮肉さ、カタルシスを感じました。

英語音声は星０、作品はもちろん五つ星

　このソフトが、すでに出ているイギリス盤やアメリカ盤のスペシャルエディションと同じマスターを使っているはず、という前提で以下、書きます。
他の方も書いていますが、このソフトの5.1chの英語音声完全版（と称するもの）は、イタリア語完全版とはラストの回想シーンの音楽が異なります。が、それだけでなく、随所に従来版と異なる箇所があります。それらは私に言わせれば明らかに改悪、改竄の類です。最後の回想シーンの音楽変更はどう考えても解釈の誤り。あれではせっかく盛り上がった情感がしぼんでしまいます。
さらにひどいのが途中の回想シーンで、銃に弾を装填するあの重要ショットの、装填の効果音がばっさりカットされています。友情、裏切り、悔恨等々、この作品のテーマが集約されたシーンであり、あの効果音に主人公の決意が集約されているというのに…　他にも、冒頭の音楽がいきなり妙な編集がされていて、テンポがずれたりしています。
アメリカ盤には「オリジナルのモノラル音声も収録」ということで、モノラル音声が入っていますが、ところがこれは5.1chをモノにした音声であり、オリジナルでも何でもありません。発売元のサイトの情報によると、今回の日本盤にもモノラル英語音声が入るようですが、おそらく同じものでしょう。そして残念なことにイタリア語版はイギリス盤、アメリカ盤同様に入らないようです。
日本語吹替音声はスティングレーの作ったものを使うようですが、この音声は元々は１５３分の英語版（ラストの回想シーン一切なしバージョン）に合わせて作られています。そうすると、最後の回想シーンの部分の音声を、別の版からコピーして挿入する作業が今回必要になるはずですが、願わくばイタリア語完全版の音声をスピードとピッチを合わせて当てはめて欲しいですね。でも多分、5.1ch英語版音声の該当部分を当てはめる可能性が高そうです。
ともあれ、作品が素晴らしいのは言うまでもないので、未見の方は上記の問題点はひとまず忘れていただいて、ぜひご覧下さい。スティングレー版を持っている人も、画質の向上や豊富な特典があるので買う価値はあると思います。但し、イタリア語完全版音声が入っているスティングレー版を手放すわけにはいかないでしょうが。それにしても、この英語版音声が今後スタンダードになるとしたら悪夢です。ブルーレイのときには本物の、変な細工をしていないオリジナル英語モノラル音声（＋最後の回想シーンの音声のみイタリア語完全版から移植）を入れて欲しいですね。

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